第二回「聖域全滅!? 最強最悪の敵!」前編

 話の都合上、黄金聖闘士は全員生きていることになっております。
 あまり関係ないのですが、サガが教皇代理、アイオロスとムウがその補佐を、カノンはジェミニの聖闘士に。
 という設定になっております。ご了承下さい。
 ちなみに、表現上の略称は下記の通り。
 オロス=アイオロス、リア=アイオリア、アフロ=アフロディーテ、アル=アルデバラン、デス=デスマスク


沙織「なんですって!?」
紫龍「どうしました沙織さん」
沙織「そ、それが…」
星矢「沙織さん、どうかしたのか?」
沙織「なんていうか、いまいち大変なコトなのかどうか分からないのだけれど…」
紫龍・星矢「?」
沙織「その…、聖闘士でも風邪をひくものなのかしら?」
  瞬「…風邪、ね」
一輝「ふん、バカバカしい」
沙織「あら、でも彼らも人間である以上は…」
星矢「少なくとも俺は無いぜ」
氷河「オレも…、無いな…」
  瞬「まぁ、それは、熱を出した事はあるけど、風邪とかいう感覚じゃないよね」
星矢「ひでぇシゴキで生死をさまよった時は熱が出たな」
沙織「…一輝もなの?」
一輝「当然だ」
星矢「小さい頃、まだ日本にた時にはひいた記憶があるが、
    少なくとも修行し始めてからは無いぜ」
沙織「そうなの…」
紫龍「沙織さん。考えてもみてください。風邪なんて身体が弱った時にひくものですよ。
    我々聖闘士にはありえない事です」
沙織「ウィルス性の…、例えばインフルエンザとかなら…」
紫龍「それも皆無でしょう。感染したとしても、コスモを燃焼させればウィルスはその熱に耐えきれず
    壊れてしまうはずです。人体は熱に42度くらいまでしか科学的には耐えられませんが、
    聖闘士ならば話は別。完治までは一瞬でしょう。
    ぶっちゃけた話、HIVに感染しても完治すると思いますが…」
氷河「それより沙織さん。今のは聖域からの連絡ではなかったのですか? 風邪が何か」
沙織「そう、今のお話はとてもよく分かったのだけれど…、
    今、聖域で風邪が猛威を振るっているそうなのです。あちらも相当混乱しているようで…」
一輝「惰弱な」
星矢「本当なのか?」
  瞬「もしそれが本当ならば異常事態ですけど」
沙織「…それが、どうやら本当のようなのです」

 キュピー―ン

氷河「…!」
沙織「氷河も気がつきましたか。瞬、あなたのチェーンが落ちつかないのもきっとその所為でしょう」
  瞬「確かにそわそわしているけれど…」
一輝「!」
紫龍「むっ」
氷河「今たしかにコスモが大きく弾けた。間違いない、あの輝きは黄金聖闘士のもの!」
星矢「じゃあもしかして、ゴールド達が風邪をひいて、それを治すためにコスモを高めている、
    そういうことか!?」
紫龍「それが現実にあり得るとしたら、な」
  瞬「でも、セブンセンシズに目覚めている黄金聖闘士達が掃えない風邪とはいったい…」

 突然ですがここで、思い描いて下さい。
 セリフは「むう」 そして星矢たち5人各自の眉間から鼻筋を横切って流れる汗を。
 できましたか? では続きをお楽しみ下さい。

紫龍「どうしますか沙織さん」
沙織「そうね、風邪の件が何かの間違いだとしても、混乱していることは確か。
    アテナ(私)は聖域へ出向かねばならないでしょう。そして必要があれば入院させたり…、
   やはり科学的なアプローチも必要でしょう」
  瞬「ぼく達も行きます!」
星矢「当然だぜ」
沙織「でも、もしあなた達に何かあったら…」
氷河「ふっ、何を言うのです」
紫龍「そうです。いかなるものからもアテナを護るのがアテナの聖闘士。我々も行きます」
一輝「ふん」 ←どうやら賛成している様子
沙織「分かったわ。さっそく自家用ジェットを用意させます。辰巳!」
辰巳「はい、お嬢様。…なんですと! そのような危険な場所に…(愚痴は省略)…なんて!」
沙織「もう決めたことです。早く用意を」
辰巳「そうですか。お嬢様がもうお決めになったのならこの辰巳もうお止めはいたしません。(息継ぎ)
    ご幼少のみぎりより…(辰巳、感涙のセリフ省略)…ただいま用意いたします」
沙織「お願いね、辰巳」
一輝「下っ端のクセにセリフが長すぎる」
  瞬「兄さん、混ぜっ返さないで下さいよ。聞こえていたらまたヤヤコシイことになるんですから」




第二回「聖域全滅!? 最強最悪の敵!」中編

星矢「聖域に着いたぜ」
  瞬「いったいここで何が起こっているんだ…」
人影「ようこそ聖域へおこし下さいました。アテナ」
沙織「あ、あなたは…」
紫龍「マスクで顔は見えないが、そのコスモは…、アリエスのムウ」
ムウ「そうです。とにかく、まずは事情をご説明いたします。さ、アテナ、白羊宮へ…」

  『ムウが語るところの事情』
 一週間ほど前のある日のこと。まず雑兵の間に風邪が蔓延。
 「神のような御方」なサガは見舞いに出かけ、なんと風邪をもらってきてしまう。
 翌日発症するも、その日のうちに完治。
 が、翌日ムウが発症。またもその日のうちに完治させるが、
 クシャミの方向がまずかったのか、アルデバランに感染。豪快なくしゃみをしまくる。
 そんな風邪の噂を聞きつけて笑いに来たデスマスクが、間抜けにも感染。
 その後、他人にうつせば治るなどと呟きつつ、本当にアフロディーテ・ミロ・シュラにうつし、
 止せば良いのに見舞いに行ったアイオリアもその犠牲となる。
 たまたま外出をしていたアイオロスも、異常を察して帰ってくるが返り討ちのように感染。
 そこからは芋蔓式に、カミュ、シャカに感染する。サガの発症からたった5日間のことだった。
 異常なのは、この時点までに完治したのがサガ・ムウ・アルデバランと、始めにかかった三人のみ
 ということ。事態をかなり重く見たサガは、遠地へ出張中のカノンを、強引に帰還させるが、失策。
 カノンは現在最も重い状態。 現在に至る。

紫龍「むう…」
沙織「それで今皆さんは?」
ムウ「病院に行くことも考えましたが、なにしろ我々の力を持ってしても撃退できないウィルスです。
    一般人にどんな被害があるか分かりません。実質上この聖域の結界内に隔離。
    各自コスモを高めて治療中です」
星矢「道理でここら一帯に攻撃的なゴールドのコスモが張り詰めている訳だぜ」
ムウ「後にかかった者の方が症状が酷くて。しかし、それ以外にもなにか、嫌な予感がするのです。
    不吉な気配がこの聖域を覆っているような気がしてならないのです、アテナ」
沙織「ええ、私も感じます。まずは日本から医師を連れてきました。一応調べてもらいましょう。
    私は皆の様子を見に行きたいのですが」
ムウ「ではマスクとマントを。私のサイコキネシスで空気感染は完全に防げますが、
    星矢、特に君達はくれぐれもモノに触らないように。でないと保証はないですよ」

 天秤宮。コスモで黄金に輝いている。

  リア「『すまん、アルデバラン。テッシュを取ってくれ』
←声出ず筆談
 デス「…ぶえっくしょいっ!!」
  ミロ「ゴホゴホ…、デスマスク、ぅ、覚えてろゴホ、よ…」
アフロ「そんなんじゃ済まさな…っクシュンクシュンクシュン」
カノン「ザーガーぁ゛ー、貴様の所為だぁ゛ぞー、うっ」 
ばたっ
 紫龍(…確かに攻撃的なコスモだが、何やらおもむきが…
 星矢(口には出せないが、カノンの充血した目があの時のサガに…
     ぐつぐつ…ぐつぐつ
 氷河「我が師カミュよ、…氷嚢が、煮えています…」ビキ ←凍らせた。
カミュ『……すまん、氷河ッ』←やはり筆談
   瞬「あ、シャカの瞳が開いてる…」
シャカ「……ゴホッ」←しかし替わりに嗅覚も味覚も破壊状態。
 沙織「皆さん、大丈夫ですか」
シュラ「あ゛、ア゛テナ…、う゛っ!」
オロス「こ、ハックション、こんな゛所に゛おでま゛しになられでは…」
 一輝「まるでマグロだな」
 紫龍「一輝、それは…。しかしこれでは聖域の防備もあったものではないな」
 アル「氷とテッシュと…、あとタオルももっといるな。シーツも換えねば…。あぁ忙し」
 星矢「アルデバラン。マスク似合わないぜ…。はっ、それより、オレ魔鈴さん見てくるっ!」
 沙織「心配要りません。いま私のコスモで…。
     いつも皆さんの力を借りているのです。こういう時くらいは私ひとりの力で守ってみせます」
オロス「おお、アテナのコスモが聖域を包んで…」
カノン「…暖かい。身体が軽くなる…」
  リア「…こ、声が戻った!」
アフロ「ん、荒れた肌もツヤツヤに!」
  ミロ「ふっふっふっ、これで…」
シャカ「アテナ、ありがとうございます。おかげてすっかり良くなりました」
 ムウ「先ほどから感じていた、あの不吉な気配も消し飛びました」
 沙織「よかった…」
アフロ・ミロ「デ〜ス〜マ〜ス〜ク〜?」
 デス「どわっー!!」
カノン「サガは何処だー! オレの意見を無視しやがって!」
 沙織「………のかしら」



第二回「聖域全滅!? 最強最悪の敵!」後編


 医師「…城戸様。これをご覧下さい。これが病原体です。ごく普通のインフルエンザにも似ていますが
     かなり進化しているようです。いえ、ほとんどの抗生物質は効くのですが…」
 沙織「…! このウィルスからコスモを感じるわ!」
 ムウ「こ、これは…、あの不吉な気配、いやコスモだ!」
 紫龍「なぜです、ムウ。こんな細菌から…」
  リア「もしや…、兵への感染を繰り返すうちに修行を積み、
     聖闘士のレベルまでコスモが高まったということか!?」
 医師「ブドウ球菌の一種でMRSAと呼ばれる菌が例といえますね。彼らの進化のスピードは
     他の生物の軽く百倍以上。そのことにより抗生物質への耐性がある菌が生まれるのです」
 ムウ「そして、サガ→私と感染してゆくにつれて、コスモがが黄金聖闘士レベルにまで高まった、と。
     あり得ぬことでもない。その証拠に段々症状が重く…」
シャカ「たしかに。コレはコスモだけをもってすれば、黄金聖闘士にも匹敵しするでしょう」
カミュ「ウィルス聖闘士とでも呼ぶべきだと?」
 アル「風邪も侮れぬわ。この聖域を混乱に落とし入れたのだからな」
シュラ「最悪の敵…か。どちらにせよ俺たちは負けたということさ」
 医師「でも抗生物質、効きますから。城戸様、死滅させてしまった方が良いですよね」
 沙織「ええ、お願いします。もうそこにいるので最後ですから…」
 医師「では注入、っと。はい完了です」
   瞬「何はともあれ、危機は去ったんだね」
 氷河「良かった…」
 沙織「よかった。ほんとうに…」
オロス「そうですね。しかし、困ったな。サガはどこに行ったのか…」

 またも聖域を騒がす元凶となってしまったサガの行方は気になるが、
 とにかく、こうして聖域でのウィルス聖闘士との死闘は幕を下ろした。

一輝「…ぶっくしょんっ!」
 …はず、である。  

                   - -

注:この話はあくまでフィクションです。
  実際にはウィルスに抗生物質は効かないそうです。
  詳しい話はコチラ→
  えっ? もっと別の部分がフィクションだって?