月光界シリーズを語る
麻城ゆうさんの代表作。 友人に対する布教成功率1/2の作品。
もともとは大陸書房で発行されていた作品でしたが、なんと大陸書房は倒産。なんてこったい。
その後、角川書店さんにて続きを発行。ホッと胸をなでおろす。
とはいえ、この月光界は麻城さんが同人誌にて繰り広げていた壮大な世界で、
商業誌で出ているのはまだまだその一部にすぎません。
ファンの欲望としては、「全部読みたい」のですが、なかなかままならず…。
挿絵はほとんどが、名コンビの道原かつみさん。
- 世界設定 -
月光界はその名の通り、月がとても大きく、太陽よりも明るく輝いている世界。
どうやら大昔は我々の住む地球のような惑星だった様だが、
何かの大異変が起こった時に、いくつかの天動の呪器と呼ばれる道具を使われ、今のような世界になったらしい。
月には月輪王という神様がいて、恵みを与えてくれているというのが主な信仰。
この月輪王のパワーは、言っていることの概念を汲みとって、なんと翻訳もしてくれる優れものなので、
もし異世界から迷い込んでも、言葉で困ることはない。こりゃ便利。
この辺は「十二国記」とは違いますな。あれはかなりシビア。
月が太陽がわりで、その光は魔道の源ってな具合になってますが、
しかし、新月の時は恵みのないところで、人死になんか出そうものなら、あっという間に穢れて悪霊ができあがってしまう。
月光界に住む人々は、
大昔の大異変を乗りきるために進化したという、獣相をもっていて、トカゲ人間、猫人間みたいなのがごろごろしている。
そんな世界なので、美人の基準もちと違う。
どんな獣相が遺伝してもしっくりくる、あまリ獣相を持たない外見が絶世の美人。
だから、スーパーモデルみたいに、彫りが深くてポンキュッポンな人より、
のっぺりした顔立ちの方が、どんな獣相が子供に遺伝しても収まりが良いってんで、モテる。
象牙の肌に黒髪碧眼というのが祖の形ということで、特にモテモテ。やったね、日本人。
月光界には月光を源とする魔道というものが存在する、剣と魔法の世界。大昔には竜もいたらしい。
呪力によって地霊・火霊・風霊・水霊を操る。風霊操りの高等技術、界渡りを使えば異世界に行くことも可能。
呪力が高い者は、その分命が重くなって長生きする。なかにはウン万年生きている者も?
社会システムは、帝王制がほとんど。
帝王といっても、その地に住む人々の気が滞らないように、まとめて流すというような、霊的な意味の人。
帝王の霊力がないとなれない職業。
あとは、まぁ、中世のような感じかなぁ? 農民いるし商人いるし戦士いるし奴隷いるし。
…で、
この月光界に、輪堂弓香がやってきてしまうところあたりの時代の話が「月光界シリーズ」。
主人公は、弓香とその親友の秀子と桃子。
それぞれ偶然と必然がからみあって、月光界にきてしまう話。
前にも書いたが、この月光界は奥が深い。
「月光界秘譚シリーズ」は、とある運命のもとに生まれた真牙が主人公…なのかな?
少なくとも「永の楽土」は彼の少年時代の話。
真牙は、月光界シリーズにも天界樹夢語りにも出てきてます。長生きなんで。
「天界樹夢語りシリーズ」は、とある運命のもとに生まれた妖魔の双子の片割れが、
母の仇を探して、天界樹という月の軌道に届かんとする樹まで、手がかりを求めに行く話。
妖魔っていうのは、よくわからないんですが、
負の霊気、妖気をもっていて、他の住人とはなんか違うらしい。人を襲って食ったりするので、恐れられている。
双子の一人ショッキングブルーは、知識売りのスフィンクスと一緒に、母の仇を討つ旅に出て、とちゅう彼と別れて、
今度は、地球から来てしまったデーモニッシュ・ディアマンド、通称DDと天界樹に行く…と。
行くまでの話なので、仇は討てたのかとか、
母を殺したのはショッキングブルーだと思わされているもう一人の双子の暗黒丸はどうしたとか、
別れたスフィンクスはどうしてんのとか、
それはまだ謎のまま。後半読んでいると、主人公はDDのような気もしてくる。
どうやらこの続きが月光界秘譚シリーズの文庫になっているみたい。
…って、書いているほうもわからなくなってきた。
時代順に並べると、
↓「月下秘抄」
↓「永の楽土」
↓天界樹夢語りシリーズ
↓月光界秘譚シリーズ 「風船の傭兵〜」
↓月光界シリーズ
となっていると思う。
この中で、軽〜くウン千年以上はたっていると思われます。
共通で出てくるキャラもいて、もうそいつらは人間とは思えません。
ややこしいことに、界渡りをすると、地球時間と月光界時間にズレができてって設定もあるので、
よけいにややこしい。
「月下秘抄」はもともと同人誌で出ていたものを出版した形。
数年前、偶然古本屋で見つけたので知っていました。
出版されたってことは、続きが読めるということ!
ひじょうに楽しみです。
んで、この「月下秘抄」は、月光界としては最古の物語。
だもんで、美的センスはこっちの世界に近かったりする。
いろいろ話はあるけれど、一つ一つのシリーズは、それだけで世界観がつかめるようになっているので、
読んでいて特に不都合は感じません。
むしろ、ゲームのロマサガとかで裏設定ってあるじゃないですか。
そういう感じで、知っているとなお面白いって感じです。
面白さといえば、
このように奇想天外な世界を、主人公たちと一緒に冒険しているような気になること。
どでかいオタマジャクシみたいな乗り物が出てきてビビッたり、
超客観的に書かれた地球のもの
(何かと交換することで霊的安定を得る肖像画の描かれた長方形のオフダ=オサツ)
という表記を読んで笑ったり…とか。
それと、まだ書かれていないエピソードを想像することですかね。
何やら裏でこそこそ、罠を張ったり、種付けしたりしているジイさんたちがいるので、
それがどういう意味を持っているのか、大昔の大異変と何か関係あるのかとか、勘ぐるのもまた楽しい。
角川ファンタジー王国か何かに、番外編の短編が載っていたと思います。
ハマるとそれらもチェックしなくては気がすまなくなります。困ったもんだ。