魔法の庭・夢語りの詩(うた)を語る
妹尾ゆふ子さんのファンタジー小説。代表作…なのかなぁ?
魔法の庭シリーズは、同人誌で出そうと思ったら出版社から話が来たので加筆修正して出したら、
その大陸書房がつぶれて、しばらくたってプラニングハウス社から続きが出て、
めでたく完結。
…と思ったらプラニングハウス社もつぶれて絶版状態という、実に壮絶な経歴を持つ作品。
「風の名前」は、魔法の庭に出てくる準主人公の過去の話。
夢語りの詩シリーズは、花丸ノベルスから出ていましたが、なぜか続きは出なくなりました。
花丸ノベルスが、boys Love系に路線変更したからでしょうか?
この作品はすべて同じ世界での物語のようなので、いっしょに紹介します。
先ほど、同じ世界と書きましたが、その根拠は、
魔法の庭シリーズの主人公の唄人が、夢語りの詩シリーズでは狂言まわしの役で出てくるからです。
この、「うた」というのがキーポイント。
作品にはかならず歌のっているのですが、まぁ、小説ですから旋律はわからないんですが、
その詩がとにかく美しい。
言葉遊び、掛詞や対句もカッコよく決まっていますし、
耳元で旋律が聞こえてくるような気すらします。
そしてその歌詞が、伏線になっていたり、物語を読み解くヒントになっていたりもするのです。
物語は、吟遊詩人が物語を歌う…という形で進められます。
そのせいか、いまひとつ現実味というか、肉感に欠ける部分があるのですが、
それは逆に、
語り手の澄んだ歌声や、歌に込められた感情そのものをリアルに感じさせる雰囲気を作り出しています。
「魔法の庭」は、妖魔の真名を握って使役する、神々の末弟の妖魔使いと、
南国の地位ある唄人だったが大罪を犯し追放された唄人が、
極寒の地の呪いを解くために、途中、唄人の過去をはさみつつ、
幻の魔法の庭を探しに行くというもの。
唄人は、過去に偶然その庭に行ったことがあるので、
道案内として妖魔使いに請われ、北の音楽を教えてもらう交換条件で道連れとなったのだ。
風の名前は、その妖魔使いの遥か過去の話。
その世界の神々の黄昏のあたりの話。彼の名前の由来の話。
「夢語りの詩」は、それからたくさんの月日が流れた時代に、
唄人がそこここで歌う物語として、オムニバス形式で話が進められる。
バラバラの物語として語られながらも、意外な接点が見付かったりして、目を見張ることもある。
が、困ったことに、物語の記憶も、儚い一時の戯れのように…
一夜の夢の如し。
何度読んでも、ついストーリーが記憶の網からすり抜けてしまう。
ようは、どうもストーリーが覚えられない。
この様に人に紹介する時に困るんですよね。
「とにかく良い、読んでみろ!」を連呼するしかない。
作者の妹尾さんは、もともとイラストレーターだったそうで、
どなたか、どのような絵を描かれるのかご存知の方がいましたら、教えて下さい。
でも、アニメの評論とかもしていらっしゃったり、謎の方です。
現在は、主にネット上で活動されており、作品を配布していらっしゃいます。